「ある精子提供者が多くの子どもを作ると、将来的にそれらの子どもが知らずして結ばれ、近親婚になってしまうのではないか」という懸念は古くから存在します。
結論:近親婚リスクはほぼゼロ
結論から言うと、そのような危険性は考慮に値しません。以下のモデルでそれを証明します。
以下は「近親婚(主に兄妹・異母兄妹・異父兄妹間の結婚)の確率」を「精子ドナー由来の子どもたちが将来偶然出会って結婚するリスク」としてモデル化するものです。
以下の仮定を置き、確率計算を行います。
■ 仮定
- 日本の総人口:1億2000万人(= 1.2×10⁸)
- 精子ドナー:1人
- そのドナーの子ども数:10人, 100人, 1000人, 10000人
- 将来、結婚相手を完全にランダムに選ぶと仮定(※実際は地域や年齢層などに偏りがあるが、ここでは単純化)
- 結婚回数は1回で、相手はランダムに選ばれる
■ モデル
任意の2人が結婚するとき、その2人が同じドナーの子どもである確率を求める。
- ドナー由来の子どもの数:n
- 任意の2人がともにそのドナーの子どもである確率は:
P = (n / N) × ((n – 1) / (N – 1))
ただし N = 1.2 × 10^8(人口)
■ 試算結果
ドナーの子数 nnn | リスク(確率) PPP |
---|---|
10 | 約 6.25 × 10⁻¹⁵ |
100 | 約 6.25 × 10⁻¹³ |
1,000 | 約 6.25 × 10⁻¹¹ |
10,000 | 約 6.25 × 10⁻⁹ |
※これは「ランダムな結婚1件」において兄妹婚になる確率
■ 補足:全結婚における想定件数
仮に一生に一度の結婚が6000万組(=1億2000万 ÷ 2)あると仮定した場合:
- ドナー子10000人 ⇒ 6000万組中、約 0.0375組(=6.25×10⁻⁹×6000万)が近親婚する確率
≒ 1件あるかないか
■ 数値としての評価
- ドナー子が100人までは実質ゼロ
- 1000人で「理論上は低リスク(1億件中0.006件)」
- 10000人になると「全国レベルで1件あるかも」程度
さらに地域偏り・年齢偏りを加味するとリスクは数倍〜数十倍高まる可能性があるが、基本的には1000人以下に子どもの数を制限すれば限りなく低い。
以上でわかる通り、1000人に提供してもリスクは極小です。交通事故や事件に巻き込まれるリスクの方が圧倒的に高く、リスクはゼロと断言しても過言ではありません。当然日本には1000人子どもがいるドナーはいませんし、100人ですらほぼいないでしょう。したがって近親婚のリスクは気にする必要はありません。