私はこの度、兵庫医科大学先端医学研究所の入澤様という方から、「不妊患者のプライバシーと子の出自を知る権利の在り方―真実告知体制の構築―」という表題の研究に関するインタビューを受けることになりました。研究概要の公開の許可を頂いたので、興味がある方はこちらからご覧ください。以下、私がこのインタビューを受けると決めた経緯を述べます。
私は10年以上、不妊治療に悩む方等、何らかの身体的問題でAID/精子提供を選ぶしかない方を見てきました。これまで相談に乗った方は500人を超えます。その経験から、日本の不妊治療対策はまだ不完全であることを確信しています。現状の制度だと、AIDを受けるまでの壁が非常に厚いこと(対応医療機関が少ない)と、ドナーを見つけることの困難さにより、AIDを受けたい(そして受けるに値する)方々が受けられないという事態が頻発しています。これは男女カップルの話だけにとどまらず、同性カップルが生殖医療から完全に排除されているという問題も含んでいます。
また、産まれてきた子の権利がどうなるかも日本では曖昧です。相続に関する権利の処理や、子どもの出自を知る権利等について、日本の法律は想定しておらず、その議論すら十分になされていない現状です。精子提供は事実上数多く行われており、このままでは将来子どもの権利が侵害されてしまうおそれがあります。私は出自を知る権利の保証を明言していますが、同じような宣言をしている精子提供者は極めて少ないのが現状です。
そして、精子提供自体に関する規制も、日本では全く行われていません。Twitter や Google で「精子提供」と検索すれば、膨大な数の精子提供者が名乗りをあげているのがわかります(2020年に、昨年の4-5倍と急増しています)。残念ながら、それら全ての方が誠実で精子提供という活動の趣旨をしっかり理解しているとは到底思えません。「紹介制サイト」と名乗り、実態は何もせずに提供者と非提供者の双方からお金を徴収したり、容姿や経歴の良さを宣伝文句にしたり、高額の報酬を要求したりと、倫理的に問題のある提供者が数多くいます。過去に精子提供者がトラブルを起こしたケースがありますが、適正な規制が無い限りはこのようなトラブルも増えていくでしょう。子どもは一度産まれてしまうと、なかったことには決してできません。トラブルが発生したときに、一番割を食うのは、何の責任もない子どもなのです。
上記の研究の目的は以下のようになっています(DCとは精子/卵子提供の補助医療のことです)。
本研究は、DCが引き起こす可能性のある法的及び倫理的問題に ついての医療関係者の見解、不妊治療カップルが望む治療体制、ドナーの配偶子提供への想い、DC児がどのような告知を望んでいるか等を分析することで、生まれてくる子の幸福を最大限に保障する告知の 在り方と今後の法整備の課題を検討することを目的としている。
私はこの目的に賛同します。当研究は今の日本に必要な研究だと考えます。何らかの事情で子どもが作れずに悩んでいる人の為に、また産まれて来た/産まれてくる子どもの幸福の為、不妊治療や精子提供に関わる人は、広くこの研究に協力して(インタビューを受けて)もらえると幸いです。
入澤様の連絡先は以下です。
art-research@hyo-med.ac.jp
https://twitter.com/hitomi6018