すべての男性は、成人した段階で精液検査を行うべきです。なぜなら、人生に多大な影響をもたらすからです。
私はこれまで、多くの男性不妊カップルから相談を受けてきました。その中には、不妊治療を長期間続け、1000万以上の費用を使って10年間苦労してきたカップルもいました。また、選択的シングルマザー希望の中には、「相手が男性不妊でどうやっても子どもができないので離婚した」という方も数多くいました。
厳しい話になりますが、これらの方は、事前に男性不妊の事実がわかっていたら、また別の選択があったのではないでしょうか。「結婚しない」という選択もあるでしょう。また、同じ不妊検査をするのにも「結婚してから判明してやむを得ず」始めるより、「結婚前から判明していてそれでも覚悟して」始めた方が、当人の納得度も高いでしょう。
子どもが持てるかどうか、そしていつ持てるかは、ライフプランに大きく影響します。その見込みを事前に知っておくのは、多くのカップルにおいて、男性・女性ともに有用なことです。「子どもができなくても気にしない」カップルも増えてきましたが、「子どもは絶対にほしい」というカップルもまだまだ多いのです。
国が成人に対して、1回分の検査費を負担してもいいでしょう。国民に対して不幸な事態が起こることを予防するための、正しい税金の使いみちと言えます。国にとっても、「不妊の事実がわからないまま結婚して、その後膨大に不妊治療の税負担がかかった」という事態を防げるので、合理的といえます。
不妊は女性・男性ともに大きな心の傷となります。しかし、子どもを持つことを前提の結婚を視野に入れる以上は避けては通れません。不妊体質の方への心身のケアを早めに行える社会にしていくべきです。